水族館
青に包まれたいときがある。
水中から水面のゆらゆらとした光の動きをぼーっと眺め、
とりとめないことを考えながらただただ息をする。
そんな時間がほしいと思うことがある。
もとをたどれば、生き物はみな海からやってきた。
遺伝子レベルの帰巣本能のようなものなのか。
昔から水族館は好きで、行けるならいつだって行きたい。
けどなかなか行けないから、とても特別な場所でもある。
行くには気合が必要というか。
それと、望んでいるのは静かで深い青の世界なのだけれども
水族館は子供達の夢の国でもあるので静かとは無縁だ。
数年ぶりにいわき市のアクアマリンふくしまにやってきた。
ちょうど三連休の初日でもあったから
だいぶ早い時間に家を出たのだけど、
やっぱり混んでいた。
入館して本館までの道のりには縄文の里という展示がある。
洞窟に見立てた通路の窓から覗く向こうには
縄文時代の自然環境が再現されていて、
これからはじまる水中の旅への期待を膨らませてくれる。
洞窟をぬければユーラシアカワウソの展示水槽。
カワウソ達は表に出てきてくれなかったけれど
川の断面を覗ける水槽はまさに水族館でワクワクするよね!
水流が強すぎて水源に向かう川魚がだいぶひっくり返っていた。
本館は化石からはじまる。
アンモナイトや三葉虫など、教科書でおなじみの子達がお出迎え。
いわきは様々な化石が発掘されており、常磐湯本には石炭化石館もある。
(いわきから発掘された化石で有名なのが、首長竜のフタバスズキリュウ)
エスカレーターを上ると植物園が広がっていて、
福島の川の上流から海岸までの動植物の生態が再現・展示されている。
特筆すべきは、イモリとナマズの愛らしさ。
ナマズに至っては笑っていた。
当魚(?)にそのつもりはなくとも、
思わずこちらもほころんでしまうような笑顔。
川の中を覗く作りゆえ、自ずと草木の高さも高くなり
自分が両生類になったような不思議な感覚。
水草の上でぼんやりしている蛙と同じ目線で世界を見られる。
それにしても、水中はとても澄んでいて
水草や苔がゆらゆらと揺らめく様は美しかった。
イワナやヤマメが岩間を行ったり来たりしながら、
涼しそうに泳いでいたのが羨ましくて
自分も川魚になったような気持ちで、
心の中で岩間を行ったり来たりしていた。
通路の途中が潮目の大水槽の上部分となっていて、
イワシの群れがキラキラと泳ぐ様を見られる。
キラキラきらきら宝石みたいだ。
次の展示スペースは北の海獣と水鳥。
海獣はアザラシやトド、気持ちよさそうに泳いでいる。
とても大きく深い水槽だけれど、それでも君たちには窮屈そうだ。
水鳥はウミガラスとエトピリカ。
鳥はかわいい。
森の鳥も里の鳥も海の鳥も、みんなかわいい。
室内と室内を結ぶ通路にはトイレがあり、
トイレの向かいはデッキになっていて
枯山水や盆栽を眺められる静かな空間が広がっている。
ベンチがあり通路を背に、ひとりを楽しめる。
だいぶ人が通るけど、遮音性が高く静かで
誰もデッキには出てこないからボケーっとしていられる。
主に施設は展示室>トイレ(通路)>休憩室
>展示室>トイレ……となっていて、
休憩室からはいわきの海が眺められる。
水族館の活動報告や福島の漁業、
捕鯨の歴史などのコラム的な展示スペースとなっている。
ユニークだったのは、水ガキの展示。
河童=水ガキ=川あそびをする子供として、
まるで図鑑の一ページのようにその生態を紹介していた。
(日本全国の河川で見られ、
仲間とどちらがはやく泳げるか競っている…など)
そして、締めくくりに切なくなった。
最近絶滅しかけている。
それは河川の整備などによる環境汚染であったり、
遊びの文化の変化であったり、
さまざまな理由がある。
また、川で子供が遊ぶ姿を見られるよう、
これからも活動していきたい。
そんな内容だった。
私も小さいころ家族で安達太良の渓谷に行って川遊びをした。
直売所で買った夏野菜を岩間に沈めて冷やしておいて。
川遊びの休憩に食べた冷たいトマトは
本当に美味しかった。
たしかにあの思い出は、とてもキレイで素敵なものだった。
もし自分にも子供ができるとしたら、
そんな思い出を作ってあげたいと思う。
…話は水族館へ。
休憩室を挟んで熱帯アジアの水辺。
福島の川と同じように、温室の動植物園のつくりとなっている。
大好きなアロワナがいるエリア。
相変わらずでかい。
そしてかわいい。
室内に戻ると珊瑚礁と色とりどりな熱帯魚の世界が広がる。
海底から眺める熱帯魚のなんと美しいことか。
足元を見れば、チンアナゴもいるよ。
歩みを進めれば、川のエリアで上から見ていた潮目の海にたどり着く。
大水槽は、福島県沖で出会う親潮と黒潮それぞれを再現している。
境はトンネルとなっていて両海流の特徴を観察できる。
ちなみに大水槽のエリアには寿司屋があり、
大水槽を見ながら新鮮なネタを食べられる。
思い切ったと思う、すごく。
大水槽の底からは空気がぷくぷくとのぼっていて、
それを無心で眺めていると心が落ち着くよ。
求めている大水槽はもっと暗く深いところなのだけど、
これは致し方ない。
今まででベストだったのが、美ら海水族館の黒潮の大水槽。
もう一度見てみたいけど、とおいなあ。
以前は直行便があったけど、今はなくなってしまったから。
大水槽の横では壁一面のボックス型の小水槽で
親潮の魚たちが展示されている。
水槽が小さくて、心配になってしまった。
生涯を通してあまり泳がなくてもいい魚たちなのかな…。
そうであってほしい。
大水槽のトンネルをくぐると深海の世界へ。
大陸棚から深海へと続く生態系の展示。
ここには求めていた青があった。
クラゲやタコ、タカアシガニがいた。
丸窓にクラゲは芸術性が高いなと思いながら。
ここにベンチを置いたらきっと、
一日中ぼんやりしていられるだろうな。
タカアシガニは結構な大群だった。
もし自分が深海に落ちていってしまって
(息もできて水圧にも耐えられた前提で)
足元にこんなたくさんでっかいカニがいたら
自分に危害を加えなくても恐怖でしかないなと思った。
深海を抜けると、友好館であるパラオの海が広がり
出口へ…。
屋外には里地の小川や沼を再現したビオトープや、
磯や干潟などを再現した蛇の目ビーチがある。
ヒトデとかナマコのお触りコーナーもあるよ。
シーラカンスのコーナーには、
タマカイというシーラカンスに近い性質をもつ魚が
展示されているんだけど…デカイ。
本当にデカイ。
サメとかクジラも大きいけれど、
THE魚って見た目の魚がここまで大きいと違和感があって
受け入れるのに時間がかかった。
生命の進化のカギを握るといわれるシーラカンス。
まだまだ謎ばかりだけど、ワクワクするね。
館内にはアート作品も展示されていた。
海の贈り物という作品。
砂浜に捨てられていたりうちあげられたゴミを、
海からの贈り物として作品にしたもの。
ただ海中に思いを馳せ、生き物を愛でるだけではなく
在り方を考えなければいけないと思わせる作品だ。
これが順序を巡って最後の最後、
出口への道にあるのがなんともいえない。
これからも地球で生きていくために、
命をつなぐために、
無関心でいてはいけない。
ただ、ほとんどの人が目をとめなかったよ。
久々の水族館ものすごく楽しかった!!
来月には金魚館がオープンするみたいなので、
また行きたいと思う。